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2026/10/30

第2回:評定間で処遇にあまり差がつかない

全4回の特別連載企画【昇給・賞与のやりがちミスを総点検】、本日は第2回をお届けします。

2027年度に向けた昇給・賞与の決定を前にしたこの時期にこそ見直しておきたい、陥りがちなミスとその対策を全4回にまとめて、ベトナム昇給・賞与調査2027開催期間中の毎週木曜日に1ケースずつ解説しています。

【各回のテーマ】

  • 第1回|評定が実態を映していない(前回の記事はこちら)
  • 第2回|評定間で処遇にあまり差がつかない(今回)
  • 第3回|予算ありきで評定を決めている
  • 第4回|相場データを読み違えている

◆ 評定による処遇差は、実際どの程度ついているか

前回は、すべての起点となる評定の決め方を取り上げました。今回は、決まった評定を昇給・賞与に結びつける段階に目を移します。

まず、よくある設計を例に、評定による差が実際にどの程度になるのかを試算してみましょう(数字は説明のための例です)。

基本給2,000万ドンの社員2人。昇給は、ベースアップとして全員一律に適用する3.5%に、評定に応じた査定昇給(標準評定2%、最高評定3%)を上乗せ。賞与は、13カ月目給与の1カ月分に、評定に応じた査定賞与(標準評定0.5カ月、最高評定0.75カ月)を上乗せ。

  • 標準評定:昇給5.5%(月110万ドン)、賞与1.5カ月
  • 最高評定:昇給6.5%(月130万ドン)、賞与1.75カ月

査定部分だけを見れば、最高評定は標準評定の1.5倍です。ところが一律部分も含めた総額で見ると、昇給で約1.18倍、賞与で約1.17倍にとどまります。金額にすると、昇給で月20万ドン、賞与で500万ドン(0.25カ月分)の差です。

会社としては評定に応じてしっかり差をつけたつもりでも、最高評定を取った社員から見れば「思ったほど標準の人と変わらない」と感じられることもあります。評定にどれだけ納得感のある差がついていても、処遇に結びつける段階で差が小さくなってしまえば、そのメッセージは社員に十分に届きません。


◆ なぜ、差が見えにくくなるのか

処遇に差がつきにくい背景として、ベトナムの職場でよく見られるケースがいくつかあります。

  • 一律部分が厚く、査定による差が埋もれる

全員の給与水準を底上げする一律の昇給部分(いわゆるベースアップ部分)を設けている企業の中には、その予算配分が厚くなっているケースが少なくありません。特に製造業などで、こうした傾向が見られます。また賞与では、製造業に限らず、13カ月目給与を一律に支給する慣行がベトナム全土で広く見られます。一律部分が厚いほど、評定によって差をつける査定部分の金額インパクトは相対的に弱くなり、冒頭の例のように、総額で見ると差が埋もれやすくなってしまいます。

  • 査定部分の倍率そのものが小さい

一方で、ベースアップを行っていない企業も多くあります。ただ、こうした一律部分がない、あるいは、それほど厚くない

業でも、査定部分の評定間の倍率そのものが小さく設定されているケースがあります。例えば、標準評定者に対し最高評定者でも1.2倍程度にしかならない、といった設定です。これは、ベトナムでの一般的な水準と比べると、かなりメリハリの弱い設定と言えます。

  • 基本給の水準が大きくばらついている

評定ごとの昇給率に差をつけていても、元になる基本給が人によって異なるため、金額で見ると差が小さくなったり、逆転したりすることがあります。特に起きやすいのが、等級や役職ごとに基本給の上限を管理していない企業です。また、給与レンジ自体は設定していても、上限と下限の幅が極めて広く取られている企業も少なくありません。こうした企業で、勤続が長いというだけで給与が上がり続け、働きぶりに比べて等級の水準を大きく超えた給与になっている社員がいると、率で差をつけても額では逆転しがちです。社員は率だけでなく額でも比べることが多いため、「高い評定を取ったのに、あの人より上がっていない」という不満につながりやすくなります。

  • 低い評定でも処遇が下がらない

離職への懸念などから、標準よりも低い評定でも、標準とほぼ同じ昇給や賞与を支給している企業もあります。低い評定の側で差をつけられない分、差は高い評定の側にしかつけられません。しかし高い評定の差を広げるには原資が必要になるため、結果として全体の差が小さくまとまってしまいます。


◆ 自社の設計を見直すポイント

では、どこから見直せばよいのでしょうか。いくつかのポイントをご紹介します。

  • 総額で見た処遇差を確かめる

まずは、一律部分も含めた昇給・賞与の総額で、評定によって実質的にどの程度の処遇差が出ているかを確認してみてください。査定部分では十分な差をつけているつもりでも、冒頭の例のように、総額で見ると差が小さくなっていることがあります。

総額で見て、評定に見合った差が出ていないと感じる場合は、一律部分と査定部分の予算配分を見直すのも一案です。一律部分の配分を少し抑え、その分を査定部分に回すことで、メリハリをつけやすい設計に近づけることができます。

  • 査定部分の倍率を確かめる

次に、査定部分で、標準評定者に対して最高評定者がどのくらいの倍率になっているかを確認します。昇給と賞与でそれぞれ適切な倍率は異なりうりますが、ベトナムでは、標準評定者に対して最高評定者は少なくとも1.5〜2倍程度のメリハリを確保しておきたい、というのが弊社の経験からの実感です。

一方で、差は大きければよいというものでもありません。特に昇給は基本給に積み上がり、翌年以降も続きます。定期昇給だけで、最高評定者に標準評定者の3倍を超えるような昇給をつけている場合は、一度見直してみてもよいかもしれません。昇格昇給や特別な調整が影響している場合は別ですが、単年度の評価結果だけでこれだけの差を基本給につけるのは、その後の給与水準への影響を考えると行き過ぎになるおそれがあります。

  • 等級ごとの給与レンジを見直す

基本給の水準のばらつきが大きい場合は、等級ごとの給与レンジ(上限・下限やその幅)を見直すことも検討に値します。そのうえで、評定に加えて、その社員の給与がレンジの中のどの位置にあるかも考慮して昇給率を決める、という方法もあります。同じ高い評定でも、給与水準がレンジの下の方にある人は昇給率を高く、上の方にある人は低めにする考え方で、額の逆転や、働きぶりに見合わずに給与が上がり続けることを抑えやすくなります。

  • 「率」と「額」の両方で確かめる

率の設計を見直したら、評定ごとの典型的な社員を何人か選び、実際の昇給額・賞与額を並べて確認してみてください。率では差があるように見えても、額にすると思ったより小さいことはよくあります。高い評定を取った社員が「報われた」と感じられる差になっているかどうかも、額で並べてみることで、より具体的にイメージしやすくなります。


◆ 改めて、「ベトナム昇給・賞与調査2027」へのご協力のお願い

弊社が主催するベトナム昇給・賞与調査2027は、毎年年末に実施している定点観測調査で、昨年は427社にご参加いただきました。本連載で触れるような評定ごとの昇給率や賞与月数の目線を、市場の実態と照らし合わせて自社の判断に活かしたい方に、具体的な根拠データとしてご活用いただいています。回答企業様は、本調査結果のサマリーデータを無料で閲覧いただけます。ぜひご協力ください。

📍次回予告(第3回)| 予算ありきで評定を決めている

昇給・賞与の合計額が予算をオーバーしそうになったとき、評定そのものを見直して予算に収めようとしていませんか。評定を動かしてしまうと、前回・今回と見てきた評定と処遇の関係そのものが崩れてしまいます。予算の制約とどう向き合えばよいのか。次回は、予算どりや予算調整の段階で起こりがちなこのミスを掘り下げていきます。次回もどうぞお楽しみに!

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