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2026/11/05

第3回:予算ありきで評定を決めている

2027年度に向けた昇給・賞与の決定を前にしたこの時期にこそ見直しておきたい、陥りがちなミスとその対策を全4回にまとめて、ベトナム昇給・賞与調査2027開催期間中の毎週木曜日に1ケースずつ解説しています。

【各回のテーマ】

  • 第1回|評定が実態を映していない(記事はこちら)
  • 第2回|評定間で処遇にあまり差がつかない(記事はこちら)
  • 第3回|予算ありきで評定を決めている
  • 第4回|相場データを読み違えている

◆ 予算超過のときに起こりがちな「評定の後付け調整」

評定ごとの昇給率や賞与月数を当てはめて全社の金額を集計してみたら、想定していた予算を超えてしまった。昇給・賞与の決定の時期には、よくある場面です。

このとき、「最高評定の人を何人か標準評定に下げれば予算に収まる」「この部門は高評定が多いので、一部を一段階ずつ下げてもらおう」といった形で、評定そのものを動かして予算に合わせようとするケースが少なくありません。

一見すると手っ取り早い調整方法に見えますが、できれば避けたい方法です。評定は、社員一人ひとりの働きぶりを表すものでもあるため、予算に収まらないときは、評定を変えるのではなく、昇給率や賞与月数といった金額の側で調整することをまずは検討してみましょう。


◆ 評定で予算を調整することの影響

評定を予算に合わせて動かすと、その年の金額は予算に収まります。ただ、その代わりに、次のような影響が出てきます。

  • 評定が、働きぶりではなく予算で決まってしまう

本来の働きぶりではなく、予算の都合で評定が決まることになります。同じ働きぶりでも、予算に余裕がある年は高い評定、余裕がない年は低い評定、ということが起こり、評定が本来の意味を失ってしまいます。

  • 昇給・賞与以外の判断にも影響が及ぶ

評定は、昇給・賞与だけでなく、昇格の判断や育成、本人へのフィードバックなどにも使われます。予算の都合で下げた評定が記録に残ると、翌年以降の昇格判断などにもその影響が持ち越されてしまいます。

  • 評価者が評定に真剣に向き合えなくなる

評価者が根拠をもってつけた評定が、後から金額の都合で変えられると、評価者は「どうせ変えられるなら」と真剣に評価しなくなったり、翌年は下げられることを見越して甘めにつけたりするようになりがちです。第1回で取り上げた寛大化が、ここから進むこともあります。


◆ 評定を動かさずに予算に収めるための考え方

評定を予算の都合で動かさずに、昇給・賞与を予算に収めるには、大きく分けて2つのアプローチがあります。一つは、評定を決める前に、予算と評定の関係をあらかじめ設計しておくこと。もう一つは、それでも予算を超えたときに、評定ではなく金額の側で調整することです。

あらかじめ設計しておく

  • 評定分布の目安を、評価に入る前に共有する

相対評価では評定分布があらかじめ決まっていますが、絶対評価やハイブリッド評価では、集計してみるまで分布がわかりません。こうした場合には、全社としておおよその評定分布の目安を決め、評価に入る前に各マネジャーと共有しておく方法が検討できます。マネジャーが目安をイメージしながら評定を検討するため、集計後に評定が大きく偏って予算を超える、という事態を防ぎやすくなります。

ただし、目安はあくまでガイドラインです。絶対評価の要素を取り入れているのは、基準に照らした働きぶりを評定に反映するためのはずです。それにもかかわらず、目安を強制分布のように機械的に当てはめてしまうと、絶対評価を取り入れた意味が薄れ、かえって実態を映さなくなるおそれがあります。相対評価に振り切っている場合でない限り、目安から外れる場合は理由を説明できればよい、という運用も検討できます。その場合は、説明された理由が合理的かどうかを人事部が確認する体制にしておくと、目安が形だけのものになるのを防ぎやすくなります。

  • 部門ごとに昇給予算を金額で配分し、その範囲内はマネジャーに任せる

各部門のマネジャーに昇給予算を金額で配分し、その範囲内での評定や昇給の配分は、マネジャーの人事判断に任せる方法です。人事部は全体を集計して評定分布や昇給配分が極めていびつでないかを確認し、必要に応じてマネジャーと話し合い、評価基準と根拠に照らして調整することもあります。マネジャーが予算と評定を一体で考えるようになる一方、 各マネジャーの人事力が一定以上の水準であることが前提になります。前提が整わないまま導入すると、部門によって人事管理の質に大きなばらつきが生じるおそれがあります。また、人事判断がマネジャー個人に属人化したり、マネジャーに権限が集中しすぎたりしやすい面もあるため、評価者研修などを通じたマネジャーの育成とあわせて、人事部や二次評価者によるけん制の仕組みを整えておくことの重要性が増します。

それでも予算を超えたときは

  • 評定はそのままに、評定ごとの昇給率・賞与月数で調整する

評定は動かさず、評定ごとの昇給率や賞与月数のほうを調整する方法です。例えば、査定昇給を標準評定2%、最高評定3%としていて、予算が査定部分で1割ほど足りない場合、それぞれを1割ずつ抑えて、標準評定1.8%、最高評定2.7%とします。こうすれば、評定はそのまま、評定間の倍率(1.5倍)も保ったまま、全体を予算に収めることができます。

一方、評定を動かして調整すると、最高評定から標準評定に下げられた人だけが査定昇給を1%失うことになり、影響が特定の社員に集中してしまいます。

また、すべての評定を一律に抑えるのではなく、調整する順番を工夫することも一案です。例えば、まず標準よりも低い評定の昇給率や賞与月数から抑えることを検討し、高い評定の調整は最後に回す、という考え方です。予算が厳しい年でも、高い評定を取った社員への処遇をできるだけ守ることは、優秀な人材のリテンションの観点からも大切なポイントです。

  • 一律部分と査定部分の配分で調整する

ベースアップなどの一律部分を設けている場合は、一律部分と査定部分のどちらで予算を調整するかも検討のポイントです。一律部分を抑えて査定部分を守れば、予算が厳しい年でも、評定による差は確保しやすくなります。第2回で取り上げた「総額で見た処遇差」もあわせて確認しておくとよいでしょう。

なお、高評定が多いこと自体が実態どおりであるにもかかわらず予算が足りない場合は、そもそもの予算の立て方に目を向ける必要があります。予算の水準を決めるときに参考にする相場データの読み方については、次回で詳しく取り上げます。


◆ 改めて、「ベトナム昇給・賞与調査2027」へのご協力のお願い

弊社が主催するベトナム昇給・賞与調査2027は、毎年年末に実施している定点観測調査で、昨年は427社にご参加いただきました。本連載で触れるような評定ごとの昇給率や賞与月数の目線を、市場の実態と照らし合わせて自社の判断に活かしたい方に、具体的な根拠データとしてご活用いただいています。回答企業様は、本調査結果のサマリーデータを無料で閲覧いただけます。ぜひご協力ください。

📍次回予告(第4回・最終回)相場データを読み違えている

「市場の昇給率は●%」というデータを見て、そのまま自社の昇給予算や昇給率の目安にしていませんか。その数字に何が含まれているのか、自社の評定の分布と照らしてどう使うべきなのかを読み違えると、予算が足りなくなったり、逆に市場水準より思いのほか昇給させすぎてしまったり、高い評定をつけた社員に十分に報いられなかったりすることがあります。最終回となる次回は、相場データを予算や昇給率の設計に活かすときに押さえておきたいポイントを掘り下げていきます。次回もどうぞお楽しみに! 

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